薬膳理論から見たビール

ビールの薬膳的功能

薬膳的に言うとビールの功能は開胃健脾です。

開胃健脾の「開胃」は食欲を促進するという意味です。

もうひとつの「健脾」は漢方界では重要なキーワードです。ただし一般的にはほとんど知られていない言葉です。

まずこの知られざるキーワードについて説明しましょう。

漢方界の重要ターム「健脾」

健脾というのは文字通り「脾」の機能を高めるという意味です。

西洋医学の世界では脾臓は免疫などに関係する臓器ですが、漢方の世界では全く意味が違います。

漢方の世界では「脾」は食べ物や飲み物から生命ネルギーである「気」を体内に取り入れる作用を意味します。

ですから「健脾」は食べ物から生命エネルギーを取り込む働きを高めることを意味します。

李杲という大医学者

その昔、日本で言うと鎌倉時代に李杲(りこう)という医学者がいました。

李杲の母親は李杲が若いときに病気で亡くなっています。その後、李杲は医学を猛勉強して当時の中国を代表する医学者になります。

今の日本でもよく使われる漢方薬「捕中益気湯」は李杲が発明した漢方処方です。

その李杲が長年の医学研究の結果として辿り着いたのが「老化の原因は脾の衰え」だという結論です。

脾が衰えると生命エネルギーが少なくなります。その結果体の全ての働きが衰えることになります。老化というのはこのようにして進行するというわけです。

逆に言えば、脾が健全なら食べものから生命エネルギーが十分に吸収されて、いつまでも若々しさをキープできることになります。

そこで李杲は脾のケアを非常に重視したのでした。

脾胃派

脾のケアを重視する李杲の立場は脾胃派という流派を生みました。この流派の影響は今の中国にも残っています。

漢方治療をするときに現在のコンディションを直接ケアするだけではなく健脾を組み合わせる医師は少なくありません。

脾の機能が弱ると漢方薬を飲んでも体がその作用を十分に吸収できないからです。

また原因がよくわからない体調不良に対しては「とりあえず健脾しておけば間違いない」とすら言われているのです。

薬膳を作る場合も同じです。脾の機能が弱まると薬膳の効き目が悪くなります。そこで普段から脾の働きをケアする食材を欠かさないようにする必要があります。

健脾作用がある食材はサツマイモ、ジャガイモ、ヤマイモ、クリ、シイタケ、牛肉などです。

小麦にも健脾作用があるという説があるので、私たちは知らず知らずのうちに健脾食材を食べていることになります。

ただし健脾の作用が強い食材とゆるい食材があるので「最近疲れがたまっているな」という場面では漢方薬としても使われるヤマイモを食べるとよいでしょう。

ちなみに畑で栽培されたものよりも天然モノのほうが作用が強いとされています。

ビールの健脾作用は朗報か?

ビールに健脾作用があるということはビール好きにとっては朗報です。

ただしここで悲報をお伝えしなければなりません。

実はお酒は体内に「湿」という「余計なモノ」を溜める性質があります。そしてこの「湿」は脾の働きを邪魔する存在なのです。

つまりビールは一方で脾の働きを活性化しつつ、もう一方で脾の働きを妨害する成分のモトになってしまうのです。

ではどうすればよいのか?

「適量」「飲み過ぎない」がキーワードです。

飲み過ぎると「湿」が溜まって脾の機能を悪化させますが、適量だと脾が活性化してアンチエイジング作用すら期待できます。

適量で我慢できるくらいなら最初から飲まん!

酔い潰れるまで飲みたいときはどうするんだ!

そういう場合は好きに飲んでください。人間に完璧なんてありませんし完璧な薬膳ライフもありえませんから。

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