便秘の薬膳ケア

便秘の薬膳ケア

便秘を改善する薬膳にはいくつかのタイプがあります。どのタイプの薬膳がよいかは人それぞれのコンディション(インナーバランス)によって違います。

そこで薬膳理論による便秘の分類を紹介しましょう。

便秘のタイプは細かいことを言えばいくらでも細かく分類できますが、ふつうは熱 冷 気滞 気虚 血虚の5タイプに分けて考えます。

この5タイプは「実」と「虚」のふたつに分類することができます。

熱 気滞が実で冷 気虚 血虚が虚です。

この時点で「熱は実熱で冷は陽虚だな」とわかった人は薬膳の基礎理論を十分にわきまえた人です。自慢していいレベルですよ。

「実」タイプの便秘

熱秘

実熱による便秘を「熱秘」と言います(この専門用語は別におぼえる必要はありません)。

薬膳理論的に説明すると熱があると津液が消耗します。その結果腸の潤いが失われて便秘になります。

このタイプの便秘の人は顔色が赤くなり口が渇いたり口臭が強くなったりします。また暑苦しさを感じることもあります。

さらに腹が張ったり腹痛を感じることもあります。実熱によるトラブルは急に症状が現れてしかも症状がハッキリしているのが特徴です。

熱秘をケアする方法は清熱潤腸です。

薬膳的には先ず食べ物のサーマルタイプを涼性にします。そして補陰をプラスします。

食材の中には桃やゴマのように潤腸作用があるものもありますが、毎回同じものばかり食べるわけにも行かないので「補陰」という大きな枠でケアしたほうが現実的です。

気秘

気滞(気のめぐりが悪くなっている状態)による便秘を「気秘」と言います。

この場合の気滞は肝と脾の気のめぐりが悪くなっていることを意味します。この結果、気の上下運動のバランスが崩れて便秘になると考えられています。

このタイプの便秘の人は胸、わきばら、腹部に不快感が現れたり、食欲が低下したり、情緒が不安定になったりします。

気滞をケアするには気のめぐりを改善する必要があります。そのようなケアの方法を理気と言います。

気秘は悪化すると熱を発生させますが、全ての人のサーマルコンディションが熱とは限りません。

まず寒熱のバランスを判定して薬膳のサーマルタイプを設定し、その上で理気作用のある食材をどう使うか考えます。

理気作用のある料理の代表はガラムマサラどっさりのインドカレーです。

「虚」タイプの便秘

冷秘

陽虚による便秘を「冷秘」と言います。陽は体を温める生命エネルギーです。陽虚(陽が不足した状態)になると体が冷えて腸の機能が低下してしまいます。この結果、便秘になってしまうのです。

このタイプの便秘の人は見た目が「元気がない感じ」になります。また手足が冷えるいわゆる「冷え性」であることが多いのも特徴です。

このタイプの便秘をケアするには補陽という方法が適しています。

ただし薬膳的にケアするときは補陽にあまりこだわらないほうがよいでしょう。
通常は温性の薬膳を使うことをおすすめします。補用作用のある食材は限られているので毎回使うのはムリがあるからです。

基本は温性の薬膳を食べて時々補陽食材を食べるくらいのほうが現実的です。

便秘と冷え性の両方に悩んでいる人に朗報です。薬膳ケアで冷秘が治ると冷え性も改善します。これが薬膳のいいところですね。

気虚秘

気虚(気が不足している状態)による便秘を「気虚秘」と言います。気には物体を動かす推動(すいどう)作用という働きがあります。この作用が低下すると便を送り出すパワーが足りなくなり便秘になります。

このタイプの便秘の人は「虚弱な感じ」がします。また疲れやすく汗が出やすいのも特徴です。便意があるのに便が出ないという便秘の中でも一番タチが悪いタイプがこの気虚秘です。

このタイプの便秘をケアするには補気という方法が適しています。

気は陽の一種なので気虚の程度がヒドイと体は冷えてしまいます。

そこで先ずはサーマルコンディションを判定して体が冷えているなら薬膳のサーマルタイプを温性に設定します。その上で補気作用がある食材を使うようにします。

補気作用がある食材はたくさんあるので普通に食事をしていれば知らず知らずのうちに補気できています。それに加えて意識的に健脾食材を使うと補気の効果が向上します。

血虚秘

血虚による便秘を「血虚秘」と言います。薬膳理論の「血」は血液とは違います。薬膳理論の「血」は潤い成分でもあります。ですから血が不足すると腸の潤いが失われて便秘になるわけです。

このタイプの便秘の人は肌の色に正常な赤みがなくなります。また精神的に疲れやすくなっています。

このタイプの便秘をケアするには補血という方法が適しています。

血虚秘の場合にはどんなサーマルコンディションになるかは一概に言えません。

薬膳ケアをする場合には先ずサーマルコンディションを判定して薬膳のサーマルタイプを設定し、その上で補血作用がある食材をどのように使うか考えます。

キクラゲやナツメなどに補血作用があります。血虚になると腸の潤いだけではなく肌の潤いも失われます。逆に血を補って便秘を解消すると肌のコンディションもよくなります。

便秘解消は美容にもプラスになるというのは薬膳理論からすると「エジソンは偉い人」以上の常識なのです。

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