桂林米粉と桂林の名物食品

桂林と米粉

中国に旅行に行くと桂林米粉と書かれた看板を必ず目にすることになります。桂林米粉の「桂林」は奇観で有名な観光地のあの桂林です。

桂林は中国南部・広西の東北部に位置します。

温暖な気候で主食は米。広西の観光の中心地であるだけではなく文化、経済の中心地でもあります。

独特な自然景観が重要な観光資源になっていますが、少数民族の文化的な多様性も見どころのひとつになっています。

今後も中国観光の重要スポットとして異彩を放ち続けることは間違いないでしょう。

桂林米粉は桂林の名物料理ということになりますが、実は桂林以外の土地でも非常にポピュラーな料理なのです。

上海にも桂林米粉のお店はたくさんあります。

米のヌードルは胃にもたれない。しかもおいしい。トッピングも充実している。それが中国人を魅了してやまない桂林米粉です。

もはや中国の国民食と言っても過言ではない桂林米粉をご紹介しましょう。

桂林米粉の起源

米粉[mǐ fěn]とは米の粉から作られるヌードルです。

漢字文化を共有する日本人の感覚からは米の粉こそ米粉だろうと考えがちですが、中国語の米粉は米ヌードルを意味します。

日本語のビーフンも米粉の一種ですがビーフンと言うと「そうめん」のように細いものをイメージするのが普通でしょう。

桂林米粉はいわゆるビーフンとは違います。スパゲッティーくらいの太さがあるのです。

この食べ物がどのように生まれたのか。中国では「そんなに昔からあったのか!」と驚くほどの伝説が信じられています。

桂林米粉は秦の時代にはすでに存在していたと言われているのです。

秦の時代の中国の食文化は北方の小麦文化です。一説によれば秦の時代には既に麺を作って食べる習慣があったと言われています。

秦の軍が南方の桂林を攻略したときに南方の米食文化になじむことができず、米の粉から細長い麺を作ったのが桂林米粉の起源だと言われています。

秦の軍隊が発明したのは米の麺だけではありません。南方特有の病気を予防するために秦の軍医が薬膳スープを考案し、このスープで米の麺を食べたことが桂林米粉の起源になったというのです。

そもそもの始まりは薬膳料理だったわけです。

桂林米粉のスープ

桂林米粉の命はスープです。

スープの作り方は店ごとに秘伝があり、店ごとに少しづつ味が違います。ただし基本的な材料はほぼ決まっています。

ベースとなる素材は豚骨または牛骨です。両方をブレンドすることもあります。

このベースに醤油と砂糖を加え、さらに漢方薬やスパイスをブレンドして独特な味を生み出します。

使われる漢方薬は草果、桂皮、甘草、八角、香茅、砂仁、小茴香、丁香、ローレル、花椒、陳皮、トウシ、トウガラシなど多種多様です。

スープの外観は日本の醤油ラーメンのスープに似ています。ただし味はかなり違います。多くの場合に牛骨の旨味が際立ったスープが使われます。

トッピングの快楽

桂林米粉の基本は米の麺とスープです。しかしそれだけではありません。ほとんどの店で出される桂林米粉にはピーナッツやレタスなどの定番トッピングが添えられています。

この他にも様々なトッピングが用意されています。桂林米粉の楽しみのひとつはこのトッピングにあります。魅惑の定番のトッピングをご紹介しましょう。

酸辣笋尖

タケノコの酸っぱ辛い漬物・酸辣笋尖[suān là sǔn jiān]は桂林米粉のトッピングの中で神級の存在です。

中国の農村ではタケノコを水に漬けておくだけのシンプルな漬物が作られています。乳酸発酵により非常に酸っぱい漬物ができあがります。

トウガラシと一緒に漬けこむことで辛味が加わった酸辣笋尖が作られます。

強力な酸味と辛味の刺激。口にすると頭部に汗が噴き出すほどの強烈さ。しかし一度食べたらクセになる魔力を秘めた発酵食品なのです。

デフォルトのトッピングとして入っていることも多いのですが、桂林米粉を食べるときは酸辣笋尖を増量するのが通の食べ方と言ってよいでしょう。

余談になりますが日本でメンマと呼ばれるものもタケノコの漬物ですが中国ではほとんど見かけません。日本式ラーメン屋に行かない限りラーメンのトッピングにも使われていません。

ちなみに中国語でメンマを注文したいときには「支那竹」では通じないと思います。上海では「笋干」と呼ばれていました。

酸豆角

桂林米粉の定番トッピングの中にはもうひとつの漬物があります。それが酸豆角[[suān dòu jiǎo]。

酸豆角は細長いを醗酵させたやや酸味がある漬物です。これを1センチくらいの長さに切り分けたモノが桂林米粉のトッピングの定番なのです。

これが名脇役。際立っておいしいというわけでもないのですが、酸豆角が入ることで桂林米粉の小宇宙に新たな次元が加わるのです。

酸豆角は特に指定しなくてもデフォルトのトッピングとして添えられていることが多いのですが、好きな人は増量します。その気持ち、わからないでもないのです。

確かに多いに超したことはないのですが、ただし存在感は薄い。酸味も酸辣笋尖ほどではありません。

強い刺激はウルサイ。もっと控えめな酸味を楽しみたい。そういう上品な人には最適のトッピングと言うべきでしょう。

搾菜糸

日本ではあまり見かけませんが搾菜糸(ザーサイの細切り)はあらゆる麺類のトッピングとして使われています。

ザーサイの細切りだけを載せたラーメンもあるくらいです。

確かに悪くない。ザーサイの味うんぬんよりも歯触りが心地よく、麺との相性は抜群なのです。ザーサイは単独で食べるよりも料理の具材として使うほうが格段においしい!

余談ですがザーサイの細切りは中国では炒め物の具材としてもよく使われます。

そのほかのトッピング

ダシを取った後の牛肉のスライスは定番のトッピングです。

また炒めたピーナッツとレタスはデフォルトのトッピングの定番です。もちろん有料で増量可能です。

麺にピーナッツは意外な組み合わせですが、食べてみると確かに悪くない組み合わせです。

また卵焼きをトッピングできるのも中国の常識です。日本では麺にはゆで卵が常識ですが中国では油たっぷりの卵焼きが定番なのです。

ラーメンにせよ桂林米粉にせよタンパク質が少ないので卵焼きのトッピングは理想的。私は桂林米粉を食べるときは必ず卵焼きと酸辣笋尖を注文していました。

桂林米粉はいわゆるB級グルメなので観光ツアーで食べることはほとんどないと思いますが、留学や駐在で長期滞在している日本人の中にはけっこうファンがいます。

米の麺は胃にもたれないし、さっぱりした味なので女性にも好まれるようです。

最近は日本でも食べられるようなので、ちょっと変わったものを食べてみたい人にはおススメです。

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