桂林の小吃(軽食)あれこれ
中国観光でのお楽しみは小吃(軽食)です。街を歩きながらいろいろなモノを少しづつ食べるのは楽しい。
特にご当地小吃は観光の楽しみを広げてくれます。
桂林で上海名物を食べたのではアメリカに行って中国製の土産を買うようなもの。
桂林に行こうと思う人のために中国人からも高評価の桂林の小吃をご紹介しましょう。
油茶
油茶はとにかく有名です。油茶を食べなければ桂林に来た意味がないとすら言われています。
非常に独特な食べ物なので桂林に行ったら油茶を体験せよという意見には同意するしかありません。
では油茶とはどのような食べ物なのでしょうか。
油茶はもともと桂林の中でも恭城という土地の名物料理でした。今でも本場は恭城だと言われていますが、現在では桂林の各所で食べることができます。
恭城には少数民族である瑶族が住んでいます。
油茶は「瑶族のコーヒー」と言われるほど瑶族の食生活に欠かせない料理なのです。瑶族は毎日食すそうです。
作るにはかなりの手間がかかります。
先ず中華鍋を小型化して厚さを数倍にしたような特別の鍋に茶葉とショウガを1本まるごと入れます。
茶葉はかなりたくさん(ふたつかみくらい)使います。
下から熱しながら数字の7の形をした茶槌という専用器具でショウガが潰れるまで叩きます。この作業を打油茶と言います。
ショウガが潰れたらラードを加えて炒めます。ショウガと茶葉がなじんだところで水を加えて煮ます。このときにネギやニンニクを加えることもあります。
緑がかった茶色い液体ができるので、これを竹で作った濾過用の器具で濾します。そのアツアツの液体を碗に注ぎ、炒った米やマメを入れてお茶漬けのようにして食すのです。
苦みと渋みがある油茶には薬膳的な効力があります。
そのひとつは湿の除去です。南方の湿気が多い土地では湿の害から体を守る飲食物が重宝されるのです。
また提神という効能もあります。これは気分をスッキリさせる作用です。お茶から作る食べ物ですから漢方理論など知らなくても納得の功能ですよね。
伝説によると清の乾隆帝が油茶を食してその効能を体感し「爽神湯」の名前を与えたと言われています。この話は桂林の食べ物ウンチクの中でも一番有名。
特別な調理器具が必要なうえに作るのがメンドウなので自宅で再現は困難。桂林に行ったときに体験すべきです。それにしても茶の利用法には驚くべきバリエーションがありますね。
ちなみにひとり分の量は大したことはないので、油茶を食した後に別の小吃を食べる余地は十分にあります。
桂林の「糕」
中国の食べ物の中に「糕」と呼ばれるものがあります。中国ではよく見かけます。沖縄名物「ちんすこう」の「こう」を漢字で書くと糕になります。
糕は米の粉や小麦粉に他の食品を混ぜて蒸したり焼いたりした食べ物です。カステラのようにフワフワのものもあれば餅のように密度が高いものもあります。
桂林は米どころなので米の粉から作られる糕が有名です。
例えば桂林碗糕は水に溶いた米の粉を小さなお椀に入れて蒸したものです。
見た目はスイーツのようですが甘いタイプとしょっぱいタイプがあります。しょっぱいタイプのほうが多く、ひき肉やシイタケなどから作った「あん」が入っていることもあります。
桂林松糕は米の粉にわずかに砂糖水を加えてから蒸して作る糕です。
もともとはおめでたい行事の時にだけ作られる食べ物だったようです。今でも購入するときは予約が必要な店もあるとのこと。
やはり甘いタイプとしょっぱいタイプがあるようですが、こちらのほうは甘いほうが一般的なようです。
桂林の糕の中でいちばん有名なのは馬蹄糕です。
馬蹄糕の馬蹄は日本ではクワイと呼ばれる水生の植物です。根元にイモのような膨らみがあり、そこからデンプン質の粉が作られます。それを馬蹄粉と言います。
本来の馬蹄糕は馬蹄粉を使って作られるものです。ただし街角で売られている馬蹄糕は米の粉やトウモロコシのデンプンで作られるものが多いようです。
馬蹄粉を使うとコストが合わないのでしょう。日本のクズ餅やわらび餅と同様ですね。
このような事情があるので馬蹄糕にはバリエーションが多く、桂林では馬蹄糕という名の見た目が全く違う食べ物が売られています。
街角で売られているのは木の容器に米の粉を詰めて蒸す方式の馬蹄糕です。作成過程や見た目がオモシロいのでこれはこれで悪くない。
レストランで出てくるのは透き通った長方形の馬蹄糕をカットしたものです。見た目はこちらのほうが上品です。ただし原料に馬蹄粉を使っているかどうかはわかりません。
桂林水糍粑
「糍粑」はモチ米を蒸して杵で叩いて粒を無くした食べ物です。つまり日本語のモチです。
ちなみに「餅」は中国語では小麦粉をねって円盤状に整形して焼いたものを意味します。ピザも中国語では餅です。
米どころ桂林ではモチも名物なのです。桂林のモチには甘い「あん」が入っていることが多いので日本の大福と似たような食べ物だと思えばよいでしょう。
日本のヨモギモチと同じようにヨモギを入れてモチをつくることもあります。また砂糖とキナコを混ぜた粉をまぶして食べる習慣もあります。日本と似すぎ!
ちなみに米の粉から作ると手っ取り早いので、現在ではモチ米ではなくもち米の粉から作る方法もあります。
もち米の粉に砂糖を入れ、水ではなく牛乳で溶く場合もあります。牛乳と砂糖の組み合わせに失敗はないでしょう。確かにおいしそう。
モチにも「あん」にもバリエーションが豊富なので観光しながら食べ比べもいいかもしれません。