スッポンを食べると精力がつくって本当?
スッポンを食べると「精力がつく」と言われています。日本ではスッポンを食べることは滅多にないのでスッポンを食べるとどうなるか体験した人はそれほど多くはないでしょう。
そこでスッポンを食べるとどうなるか薬膳的に解説します。これからスッポンを食べてみようと思う人は参考にして下さい。
スッポンのサーマルタイプは平です。どんな人が食べてもサーマルコンディションを悪化させることはありません。
スッポンの功能は滋陰涼血 補益調中 補腎健骨などです。
これが日本語だと言い張るつもりはありません。言葉が難しいのが薬膳の欠点です。でも大丈夫。順番に説明しましょう。
スッポンの功能を暴く!
スッポンには薬膳的な効能がいくつかあります。
大きく言えばどれも「補」の功能なのですが「補」にもいろいろあるので少し詳しく解説しましょう。
滋陰涼血
滋陰涼血は陰を補い熱を冷ますという意味です。
涼血というのは血を冷ますという意味ではなく「血分熱」というタイプの熱を除去することを意味します。
ちなみに血分熱は漢方的にはかなりの重症です。場合によっては命にかかわるような状態です。
ですから涼血を目的にして薬膳を作ることはありません。薬膳を作る場合にはスッポンは陰を補う補陰食材だという点が重要です。
スッポンには補陰作用があるので虚熱の改善を目的とした薬膳の代表的な食材になります。
「スッポンが陰を補う」は中国では一般の人でも知っている食べ物常識のひとつです。
補益調中
補益調中の「中」は脾と胃を表します。スッポンには脾と胃の働きを促進する作用があります。
脾と胃の機能が高まると飲食物を消化して生命エネルギーを体内に取り入れる機能が強化されます。
この結果として生命体としての活性が上がり肉体的にも精神的にも活発になります。ですからスッポンを食べると精力がつくというのは正しいわけです。
中国ではスッポンは虚弱体質を改善する食品だと考えられています。
この考え方がいつの間にか日本にも伝わっていたのかもしれませんね。
補腎健骨
補腎健骨は腎の機能を高めるという意味です。
薬膳理論の「腎」は私たちの日常用語の「腎臓」とは違います。腎には腎臓とは違う働きがたくさんあります。
例えば腎は呼吸にも関係があります(腎主納気)。私たちの常識では呼吸は肺の役割ですが、漢方理論では呼吸の一部は腎の働きだと考えられています。
腎は骨のコンディションを保つ働きもあります(腎主骨)。スッポンは特にこの作用を強化するというわけです。
そもそも腎は体の成長を促進する臓器です。ですから補腎健骨という作用は「体格をしっかり成長させる働き」だと理解すればよいでしょう。
スッポンは「シバリ」の多い食材
スッポンは申し分ない健康食品のように見えますが実は「こういうときは食べてはいけない」という「シバリ」が多い食品です。
まず妊婦さん、産後間もない女性は食べる量に気をつけるべきだと言われています。特に下痢気味の時は食べてはいけません。
スッポンは陰を補う作用が強いのでプラス面も大きいのですが陰を過剰に補うと「湿」などの病理物質に変化して体内に溜まってしまうからです。
湿が溜まると脾の機能を邪魔するので新たな生命を生み出すためにエネルギーを必要とする女性にとっては害が大きすぎるのです。
同じ理由から脾の機能が低下している人や体内に湿が溜まっている人もスッポンを食べないほうがよいとされています。
特に問題がない人でも一度にたくさん食べてはいけない食材です。
「シバリ」はそれだけではありません。食べ合わせ問題もたくさんあります。
スッポンと一緒に食べてはいけないものの中から日本でも一般的な食材を紹介しましょう。
それは桃、たまご、トリ肉、カニです。
他にもタウナギなどたくさんの食品がありますが日本ではあまりお目にかからないものなので桃、たまご、トリ肉、カニだけ注意してください。
食材としてのスッポンについて
中国史上最も有名な美食家で清代のブリア・サバランと称される袁枚(えんばい)は、スッポンは大きすぎても小さすぎてもおいしくないと言っています。
そしてスッポンは冬が一番おいしく次いで春と秋のスッポンが美味だそうです。夏のスッポンは低評価です。
日本ではスッポンを食べるのは特別な場合でしょうから、どうせなら冬のスッポンを味わうようにしたいものです。
最後にスッポンの生き血についてひとこと
中国に行くと食事の席でスッポンの生き血を勧められることがあります。
しかしながら生き血には寄生虫が潜んでいることがあります。
寄生虫入りの血を飲んでしまうと日本に帰国してから発症する可能性が高くなります。日本の医師は寄生虫感染症に慣れていません。ですから重症化する危険があります。
生き血を飲んでも大丈夫なことも多いのですが飲まずに済むならそれに越したことはありません。
生き血を1回飲んだくらいでは薬膳的なメリットなどありません。そこにあるのはリスクだけなのです。こわ~