カレーとトマト
今日はカレーにしようと決めたときにどんな野菜を買いますか?
ニンジン、玉ネギは定番として、ジャガイモ、キノコ、ナス、オクラなどを選ぶ人もいるかもしれません。
クックパッドで「野菜カレー」を検索してレンコンをサムネ買いする人もいるでしょう。
ではトマトを買う主婦がいたらどう思いますか?
トマトをカレーの具にしても形が崩れてしまうのでは? と心配になりますが、それでいいのです。
水を一切使わずにトマトの水分だけでカレーを作るのがトマトを買った主婦の目的なのです。
トマトを刻んで鍋に入れて火にかけると水分が出てきます。その水分で炒めたカレーの具材を煮るわけです。
こうするとコクのある味わい深いカレーができます。
野菜カレーのベースにすれば爽やかな味わいに仕上がりますし肉を使ったカレーにも合います。
カレーを作るときにトマトを買う人は少ないと思いますが、実はトマトはカレー作りに大いに活躍する野菜なのです。
ではトマトを使ったカレーにはどのような薬膳的功能があるのでしょうか?
トマトの功能
トマトのサーマルタイプは寒です。微寒としている文献もあるので平性に近いと考えてよいでしょう。
トマト単体ではわずかに体を冷やす作用がありますが、カレーに使う場合は通常はスパイスの温性のほうが強いので、この作用は無いのと同じです。
トマトの功能は生津止渇、健胃消食です。またまたわかりづらい言葉が出てきました。これだから薬膳ってヤツは!
でも大丈夫です。解説しましょう。
健胃消食は食欲増進、消化促進作用だと考えてください。
トマトを食べると食欲が高まるということは、食事のスタート時にサラダを食べるならトマト入りがよいということになりますね。
生津止渇は体の潤い成分を増やして渇きを癒す作用です。大きな枠で言えば「陰」を増やす作用があるわけです。
トマトは単体では食欲不振や陰を増やして口の渇きを改善する食材です。
薬膳カレーとの関係では「陰」を増やす作用に注目しましょう。
カレーのようなスパイシーな料理には「陰」を消耗する作用があります。ですから消耗する「陰」を補う効果がある食材との組み合わせが望ましいわけです。
つまりカレーにトマトを使うことは薬膳的にはスパイスの作用で消耗される「陰」を補うという意味があるのです。
「瀉」と「補」
漢方の世界では体内の成分を奪う作用を「瀉」と言います。体に何らかの成分やエネルギーを与える作用を「補」と言います。
薬膳的には「瀉」と「補」のバランスが大切です。「瀉」だけでは生命エネルギーが低下して老化が進んでしまいます。「補」ばかりだと体内に「からだにとって余計なモノ」が溜まってしまいます。
一方で与えながらもう一方で奪うことによって「流れ」が生まれます。この流れが生命活動を活性化すると考えられています。だから「どうせ奪うんだったら与えなければいい」とはならないわけです。
ガラムマサラは強力な「瀉」の作用を持ちます。ですからカレーを薬膳にするには「補」の食材との組み合わせは絶対条件です。
トマトは「補」の作用を持つのでトマトベースのカレーは「瀉」と「補」のバランスがとれています。
トマトとカレーのコンビネーションは、おいしいだけではなく薬膳的にも優れた組み合わせなのです。
ただしカレーに入れたトマトには「瀉」と「補」のバランスをとるという以上の際立った作用はありません。
トマトカレーはガラムマサラの「陰を消耗する」というデメリットを消してガラムマサラのメリットだけを残したカレーのベースなのです。
さらに別の効能を付け加えたいときは別の具材を加えることによって効能を調節することになります。