中国各地の正月食文化

中国各地のお正月の食文化

日本でお正月の食べ物と言えば「おせち」。中国にもお正月の食べ物があります。ただし全国的に同じものを食べるわけではありません。

中国は広いので各地にご当地のお正月食品があるのです。しかも地域差がかなりあります。共通しているのはどれも「縁起がいい食べ物」だということ。

食べ物に込められた寓意とともに中国のお正月料理を探ってみましょう。

東北地方

中国の北方は粉モノ文化の土地です。日本では年越しにソバを食べますが中国の北国では水餃子を食べる習慣があります。

そもそも餃子は元宝という昔のおカネの形に似ているので豊かさを象徴する縁起モノです。

さらに年越しの水餃子の中にはコイン入りの餃子を混ぜて、誰がその餃子を引くかによって新年の運気を占う習慣もあります。

最近は衛生上の理由からコインではなくキャンディーやピーナツを入れる家庭が多いようです。

キャンディーは「甘い生活」の象徴、ピーナツは別名が長生果なので「長寿」の象徴です。

水餃子を細い麺と一緒に茹でる食べ方もあります。

この場合は麺が「金糸」を意味し「金糸が元宝を包む」という有り余る財産の象徴となります。

ちなみに細長ーい麺は単独でも「長寿」を象徴するおめでたい食べ物とみなされています。

四川省

四川省のお正月料理を1文字で表現すれば「肉」です。特に燻製肉やソーセージなどの保存食としての肉を食べる習慣があります。

ブタの耳やウシのしっぽの料理が揃っていると「頭からしっぽまで」つまり「全」を象徴し、たいへんおめでたいとされています。

中国は農耕文化の国というイメージがありますが肉食の文化も非常に発達しています。

中国各地に肉の保存食品があり家庭でもシーセージを作ったり燻製を作ったりしています。

寒い季節に備えて作っておいた保存食をお正月にパーッと食べることで景気よく新年を迎えるワケですね。

四川省の人たちのブログなどを読んでいると「四川省ではお正月に火鍋を食べると思っているなら大間違いだぞ」と書いている人もいます。

お正月の四川では麻辣味は封印されているようです。

蘇州

蘇州のお正月にはモチが欠かせません。

中国語でモチは「年糕」または「年年糕」と言います。この文字は音が「年年高」と同じです。つまり「毎年向上する」という意味になります。

また白いモチは「銀のインゴット」つまりおカネの象徴でもあります。

日本では「お雑煮」にモチが入りますが、そのモチは地域によって大きさや形が違います。ひとくちに「モチ」と言ってもモチには地域性があるワケです。

中国でも事情は同じです。

蘇州のモチは「桂花糖年糕」という甘いモチです。これはモチ米に砂糖と桂花を混ぜて作られます。

食べ方は自由。焼いても揚げても蒸してもよいのです。

また薄切りにして卵と小麦粉を混ぜた液に絡めてから焼く食べ方もあります。

ちなみに現在の中国のモチはモチ米の粉を蒸して作ることが多いので日本のモチとは食感が違います。

私はけっこう長いあいだ中国に住んでいましたが今でも蒸したもち米を突いて作るモチのほうが好きですね。

安徽省合肥

合肥では「鶏抓豆」という料理を食べるそうです。豆はおカネの象徴。それをつかみ取ることを意味する料理です。

もちろんこの場合の鶏はふつうのトリ肉ではなくトリの脚(鶏爪)を使います。

中国に住んでいるとトリの脚を食べることに違和感がなくなるのですが、この文化は世界的に見ても珍しいのではないでしょうか。

脂肪が少なくコラーゲンたっぷりの食材なのですが、見た目のせいで敬遠する人が多いようです。しかも食べるときに骨を避けるのがメンドウ。

さらに日本人にはなじみの薄い八角を使って調理することが多いのもトリの脚が避けられる理由のひとつになっているようです。

しかしながら中国には様々な調理法があり、いつかは自分の好みに合ったトリの脚料理に出会うことになります。

そうなると点心を食べるときなどに「とりあえず鶏爪」と注文するようになってしまうのです。

広西

広西ではお正月に「ちまき」を食べる習慣があります。

中国でも「ちまき」は端午の節句の食べ物だというのが常識なのですが広西ではお正月の食べ物なのです。

現地ではこの「ちまき」を枕頭粽と呼びます。とにかく大きい。だから枕。ひとつの枕頭粽を数人で食べるのです。

塩、酒、醤油などで味付けしたもち米の中に肉やナツメやクリなどを入れて作ります。

お正月には大量の枕頭粽を作りいったん煮てから冷暗所に吊るしておきます。そして数日に一回煮ることで腐敗を防止し、お正月のあいだ食べ続けるそうです。

このあいだに「ちまき」の中に仕込まれた複数の食材の味が融合して味が深まるのだそうです。

ちなみに「粽」は「中」と発音が同じなので「当たる」という意味がかけられています。やはり縁起モノなのですね。

まだまだあるお正月の食文化

今回紹介した中国のお正月の食文化は全体の中のほんの一部です。

今回取り上げなかった地域にもいろいろなお正月料理があります。新疆や内モンゴルなどには独自の文化がありますからね。

さらに同じ地域の同じ料理でも各家庭によるディテールの違いや好みの差があります。

まさに多種多様。興味尽きませんね。

ただしモチにしても「ちまき」にしても最近の中国では大量生産されたものが出回っています。

中国人の言うには、やはりお正月料理は手作りがイイとのこと。

このへんは日本と似てますね。

昔は「おせち」は無理やりでも家庭で作っていましたが今は業者が作ったものを購入することが多いようです。

プロが作るほうがおいしいしバリエーションも豊富になりますが「我が家の味」ではありません。

誰もがプロの味を求めるようになると食の多様性はだんだん消えてゆくのでしょうね。

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