医食両用の漢方薬
漢方の世界では食材と薬は連続しています。そのせいで普段の食事に強力な漢方薬が使われるケースもありました。
そこで中国政府は医食両用の漢方薬、保健食品(トクホみたいなもの)に利用可能な漢方薬、
食品に使ってはいけない漢方薬をリストアップして食の安全を確保しようとしています。
医食両用の漢方薬としてリストアップされた漢方薬は料理に使っても比較的安全ということが言えますので薬膳作りの参考になります。
日本でも手に入る医食両用の漢方薬とはどのようなものなのか。ご紹介しましょう。
日本では「薬」と意識されていないもの
カレーと薬膳についての記事を読まれた方はスパイスの多くが漢方薬として使われていることをご存知でしょう。
クローブ、八角、コショウ、ウイキョウ、シナモン、サンショ、ナツメグは医食両用の漢方薬です。こうしたスパイスが一種の薬だという理解にはあまり違和感はないと思います。
もっとフツウの食材も医食両用の漢方薬に指定されています。
例えばヤマイモやショウガ。このふたつは中国の病院では処方箋に頻出の漢方薬でもあります。
また蜂蜜、クルミ、ゴマ、シソ、ラッキョ、ギンナン、ユリ根、昆布も医食両用の漢方薬に指定されています。
昆布が薬というのは不思議な気がするかもしれませんね。しかし医療関係者にこの話をすると「なるほど」という反応が多いのです。
中国の内陸部ではヨード不足の病気に罹ることがあるのですが、昆布を食べるとヨードが補われることによって症状が改善するのです。
このように漢方の効果は科学的に説明できるケースも多いのです。
緑豆、刀豆、白扁豆、アズキは日本では食用のマメですが中国では漢方薬としても使われています。
豆を食べるときは体の状態に合わせて選ぶようにすると薬膳的な効果が高いのです。
さらに日本ではクズ湯やクズ餅の原料になるクズは有名な漢方薬「葛根湯」の成分ですが、これも医食両用の漢方薬です。
日本でも漢方薬と思われているもの
薬膳というと多くの人がイメージするクコやナツメは医食両用の漢方薬に指定されています。
またある程度薬膳を勉強した人ならハスの実、リュウガン、ヨクイニンを使ったことがあるでしょう。これらも医食両用の漢方薬に指定されています。
以上は日々の食事の中で利用しても安全な漢方薬ということになります。
この他にもミント、サンザシ、クワの実、ドクダミ、タンポポも医食両用の漢方薬です。
また薬膳茶や薬膳ドリンクの素材としてよく使われる菊花、金銀花、决明子、羅漢果、桑の葉、蓮の葉も医食両用の漢方薬です。
この辺までは漢方薬の中でも安全な部類だという感じがします。
ところが甘草も中国では医食両用の漢方薬ということになっているので、日本の専門家にとってはちょっと意外かもしれません。
確かに甘草は食品に添加されることがありますから食品の一種といっても間違いではありません。
ただし日本の漢方薬の注意書きには甘草の過剰摂取に対する注意喚起があります。
日本では甘草の適量はかなり少なく規定されているので、日本の専門家は甘草の量に神経を使っています。
それなのに中国ではシロウトが勝手に甘草を使ってもよいわけです。まあ、これは文化の違いでしょうね。
中国では甘草は誰でも簡単に買うことができるのであまり厳しく規制しても意味ないのでしょう。
漢方薬と薬膳
日本の薬膳料理に使われる漢方薬のほとんどは中国で医食両用に指定されているものばかりです。
つまり一般的な食材と比べるとやや薬効(体への作用)が強いけれども基本的には安全なものを使っているわけですね。
私は料理に漢方薬を使うことをおススメしていませんが、薬膳を勉強する人の中にはやはり「いかにも薬膳らしい」料理を作りたいと思う人もいるでしょう。
クコとかナツメが入っていると本格的な感じがします。
薬膳の神髄は「楽しむこと」ですから、医食両用の漢方薬を使うのも悪くはないでしょう。
ただし毎日漢方薬入りの薬膳を作っていると家族に嫌がられることもあるので要注意。
本格的な薬膳料理はたまに食べるからよいのです。