シンプルな小吃・葱油餅は中国人のソウルフード

何でもないような幸せ

人は豊かになるとシンプルな食べ物が懐かしくなるようです。最近の中国では昔ながらのシンプルな食べ物が注目を集めています。

上海ではイギリスのBBCの報道がきっかけになって、とある小さな葱油餅[cōng yóu bǐng]の店に注目が集まり長蛇の列ができました。

現在はどうなっているかわかりませんがピーク時には6時間待ちだったそうです。

その店もその店の店主も再三再四中国のメディアに登場しました。

中国の食の流行を追う私としては、それらの番組をチェックしないわけにはゆきません。

改革開放の時代に店を始め、いくつかの商品を販売していたけれども最終的に葱油餅一本に絞って成功した……

私はその店の葱油餅を食べたことはないのですが、店主のストーリーには詳しくなったのです。

ところで葱油餅って何でしょうか?

葱油餅

葱油餅を中国のウェブサイトで検索すると「北国の小吃の一種」と書いてあります。

でも上海では上海の伝統食だと思っている人が多いのではないでしょうか。それくらい上海でもポピュラーな食べ物なのです。

日本語の「餅」はモチ米で作りますが中国語で「餅」は小麦粉をねって焼いたモノを意味します。

ですからネギ油を煉り込んで焼いたモノは全て葱油餅と呼ばれる資格があります。実際に中国の各地にはさまざまな葱油餅があるのです。

シンプルな食べ物だけに、ちょっとした厚さの違いやネギの量の差が大きな意味を持ちます。

葱油餅の作り方

葱油餅はいたってシンプルな食べ物です。

私が見たいちばん簡単な葱油餅は小麦粉を煉ったものに刻んだネギを入れてよく混ぜたものを油をたっぷり使って焼くというスタイルでした。

ひとつの大きさはピザくらい。それをピザを食べるときのように三角に切り分けて売っていました。

たぶん今の上海の路上でもこのスタイルの葱油餅が販売されていると思います。

でもそんな作り方はもう古いのです。

イケてる葱油餅を食べたいなら先ずネギ油を作ることから始めます。

お椀に刻んたネギと小麦粉を入れ、そこに熱した油を注ぎます。それをよくかき回して粘着力があるネギ油を作ります。

次によく煉った小麦粉の生地を平らに延ばします。厚さは5ミリくらいでしょうか。

延ばした生地の表面にネギ油をぬります。そうしておいて生地を折り返し、麺棒で延ばしてからまたネギ油をぬります。

それをまた折り返し……という作業を続けることによって層ができます。

最後に何層にもなった生地を板状に延ばしてロールケーキのように巻きます。それをロールケーキを食べるときのように切り分けます。

切り分けた断面が上下になるように板の上に置き、麺棒で円盤状に延ばします。これを油(ラードを使うとよいそうです)たっぷりのフライパンで焼くと完成します。

特徴は表面がカリっとしていて中は油ギトギトです。出来立てのアツアツじゃなければ食べる価値なし!

葱油餅の仲間

中国の街を歩いていると手抓餅という文字をよく見かけます。

手抓餅は台湾発祥の食べ物だそうです。

手抓餅は葱油餅とよく似ています。というよりも作り方をよくよく見ると葱油餅と同じなのです。

葱油餅は中国各地にある小吃なので、その土地ごとに作り方が少しずつ違います。

台湾風の葱油餅が手抓餅だと考えればよいでしょう。

手抓餅はあまりにもおいしいので中国大陸の葱油餅が手抓餅にとって変わられつつあるようです。

体への影響

中国の巷では葱油餅は清熱と去痰の作用がある食べ物ということになっています。

清熱ということなので体を冷ます作用があるということになりますが、ネギは温性の食材なのでサーマルタイプは平性に近いと考えてよいでしょう。

また功能は生津止渇です。つまり体の潤いを増強する作用があるのですが、このタイプの食べものは食べ過ぎると去痰どころか逆に痰の生成が促進されてしまいます。

たまに食べる「おやつ」という感覚で付き合うとよいでしょう。

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