クズ餅のクズは葛根湯の葛根

葛根湯の葛根とクズ餅のクズ

有名な漢方薬の葛根湯には葛根(かっこん)という薬が入っています。
実はこの葛根という薬はクズ切りやクズ餅などの原料になるクズ(葛)なのです。

ですからクズ餅を漢字で書くと「葛餅」になります。

薬にもお菓子にもなる葛根はどのように作られるのか?

葛根にはどのような薬膳的作用があるのか?

気になる薬膳食材「クズ」のあれこれをご紹介しましょう。

クズってどんな植物なの?

クズは日本にも自生しているマメ科の多年草です。

アウトドア派の人にとってはよく見かけるありきたりな植物だと思います。

クズはツルを伸ばして繁殖します。古代の中国ではこのツルから繊維をとって布を作っていました。

このためクズは生活に役立つ重要な植物だと考えられていたようです。

周の時代にはクズを管理する「掌葛」という官職があったくらいです。

クズの根はサツマイモを大きくしたような恰好をしています。

栽培モノのクズの根はダイコンよりも少し小さいくらいのサイズですが何年もかけて成長した野生のクズを掘ると、ひとりの力では持ち上がらないほど巨大な根を採取することができます。

漢方薬の葛根

葛根は文字通りクズの根です。

クズの根を掘り出してよく洗いカットしてから乾燥させると昔ながらの葛根になります。

日本の漢方薬には葛根のエキスを抽出してからパウダーにしたものが使われています。

葛根のサーマルタイプは涼性です。

功能は解肌退熱、透疹、生津止渴、升陽止瀉です。

これは専門用語なので薬膳初心者の方は理解できなくても問題ありません。「いろいろな効能があるんだな」という程度の理解で十分です。

専門家のために付け加えますと葛根の功能の中の「生津」に対しては「升津」が正しいとの論争があります。

中国の一般的な資料には生津と書いてありますが葛根湯の功能のほうは升津となっているのが普通です。

葛根の味が酸甘ではなく辛甘であることから考えると生津ではなく升津が正しいと思われます。

ですから治療薬として葛根を用いるときには傷陰の可能性を忘れてはいけません。

葛根湯について

葛根湯は桂枝湯に葛根と麻黄を加えた処方だと考えることができます。つまり葛根湯は表証の治療薬なのです。

功能も中医学的には発汗解表・升津舒筋とされています。

しかし日本では表証以外の場合にも幅広く応用されているようです。

葛根単独の功能を見ると表証にも裏証にも使えることがわかります。

この葛根の作用が葛根湯の幅広い応用を可能にしているのでしょう。

クズ餅の原料としての葛根粉

クズの根をすりおろして布で濾すとデンプンを集めることができます。

このデンプンは葛根粉という漢方薬です。功能は解熱除煩、生津止渴です。

葛根からデンプンだけを分離すると解表作用がなくなると考えられているようです。

葛根のデンプンは日本では薬というよりもお菓子の材料であるクズ粉として知られていますよね。

クズ切り、クズ湯、クズ餅など。

クズ粉は和菓子と縁が深いですね。

きっと昔の日本では今よりもずっと生活に密着した食品だったのでしょう。

葛根粉の自作

クズ粉は生産に手間がかかるのでイモデンプンなどと比較すると高価です。

このため市販の製品の中にはクズ粉の代わりに安価なデンプンを用いる類似品も多いそうです。

本物の味を確かめるには原料をよく確認してから購入すればよいのですが、もうひとつの方法としてクズ粉自体を自作する方法もあります。

これはクズが自生している地域限定ですがクズの根を掘ってすりおろしてから布で濾せば自分でもクズ粉を採取することができるのです。

自作すると市販されているものよりも漢方薬の葛根粉に近いものができます。

手作業ですとデンプンの純度を高めることができないので古代中国の葛根粉と似た品質になるからです。

漢方薬としての葛根粉は1日に10から30グラムが適量だと言われています。

この範囲で和菓子を作ると昔ながらの味になるハズです。

薬膳的には熱証を改善する作用があります。体が冷えている人には向いていません。

夏の暑さでからだに熱が籠ってしまったようなときにおススメです。

葛根花

葛根の花を乾燥させると葛根花または葛花と呼ばれる漢方薬になります。

葛根花には解酒毒という効能があります。

具体的にはお酒を飲み過ぎたときの頭痛や吐き気のケアに使われます。

飲酒の後に葛根花を飲むと二日酔いを予防できるとも言われています。

ただし長期常用や大量服用すると反ってになるとの情報もあります。

1日の適量は3から9グラムとされています。

クズの花を保存しておいて「ここぞ!」というときに利用するとよいでしょう。

タイトルとURLをコピーしました