女の子が生まれたら女児紅
中国酒が好きな人は女児紅という酒をご存知でしょう。
現在の女児紅は紹興酒の商標のひとつになっていますが本来はブランド名ではないのです。
日本ではあまり知られていない女児紅の由来についてご紹介しましょう。
女児紅の由来
女児紅は4世紀の初めころにはすでに存在していたようです。
かなり昔の話なので女児紅の始まりについてはいくつかの伝説があります。そのなかで信憑性が高いと思われるのは次の話です。
紹興のとある仕立て屋が結婚し、その奥さんが妊娠しました。
喜んだ仕立て屋は子供の誕生を祝うための酒を大量に仕込みました。
ところが当時の中国には強烈な男尊女卑の風潮がありました。
男の子を期待していた仕立て屋は子供が女子だったことで落胆し仕込んだ酒を裏庭の桂花の木の根元に埋めてしまいました。
月日は流れ女の子はすくすくと成長しました。美しく聡明で仕立ての腕がよく、その子のおかげで仕立て屋の商売は大繁盛したのです。
そのときになってようやく「女の子も悪くない」と気付いた仕立て屋は一番弟子に娘を嫁がせて婚姻の宴を開いたのです。
宴には酒が欠かせません。
桂花の木の下に酒を埋めたことを思い出した仕立て屋は酒を掘り出して味を確かめてみました。
長期熟成による馥郁たる香り! この上ない美酒に成長していました。
これがきっかけとなり女子が生まれたら酒を埋めて嫁入りのときにその酒を持参するという習慣が生まれたとされています。
伝統は受け継がれている
つい最近のことですが「80後(1980年以後に生まれた世代)」の中国人女性が実家で女児紅を埋めていたと話しているのを聞きました。
今でも女児紅を埋める人がいるとは知りませんでした。
もともとは紹興のローカルな習慣だったハズですが、その人は紹興から遠く離れた陝西省の人です。
子供が生まれたときのイベントとして何かしたいという親心と共鳴する習慣ですから中国各地に女児紅を埋める人が今でもいるのでしょう。
ちなみに女児紅の習慣が定着した後に男子が生まれたときにも酒を埋めるようになりました。これを状元紅と呼びます。状元は科挙の主席合格者を意味します。
宰相でも将軍でもなく「状元」という言葉が選ばれるあたりに今も変わらない中国人の考え方が現れています。
紹興酒の薬膳的功能
女児紅、紹興酒は中国では黄酒に分類される酒です。
中国では米などの穀物から作る醸造酒を一般的に黄酒と呼ぶのです。
米から作られる日本酒は透明に近いのに黄酒は濃い琥珀色になるのですから醸造法次第で酒の性質は大きく変化するわけです。
中国の古い医学書にも黄酒は登場します。
黄酒のサーマルタイプは温性で功能は補血養顔、活血去寒、通経活絡です。
体を温め「めぐり」を改善する働きがあるというわけです。
また黄酒は薬引子としても使われてきました。
これは薬の効果を狙ったところに届ける作用を持つ薬の総称です。
黄酒そのものの功能の他に薬引子としての効果もありますから中国には古い医学書の指定通りに黄酒と一緒に漢方薬を飲む人もいます。