陝西省の麺食文化

陝西省

中国北西部の陝西省は麺食文化の聖地です。

陝西省は歴史の教科書でもおなじみの兵馬俑がある土地なので観光で訪れる人も多いと思います。

陝西省に旅行に行くなら歴史的なスポットに注目するだけではなく麺食王国とまで言われる食文化も堪能すべきでしょう。

ちなみに中国の麺(現代中国語では「面」と書きます)は細長いヌードルだけではなく、いわゆる「粉モノ」全てを意味します。

パンも、たこ焼きも、お好み焼きも中国では麺の一種ということになります。

西安名物biangbiang麺

陝西省の省都は西安です。

ちなみに三蔵法師の時代の唐の都・長安が現在の西安。歴史の長い街です。

西安の名物のひとつにbiangbiang麺があります。なぜアルファベット表記なのかというと漢字だと難しすぎて(画数が多すぎて)表記できないからです。

しかも漢字にはいくつかの異字体があるらしく、いまのところ中国のネットでもアルファベット表記になっています。

biangbiangは麺を打つ時の音を表現しています。

この料理を作るには先ず小麦粉を煉って厚みがある幅広の麺を作ります。

その麺を茹でてピーナッツペーストや香辛料などを混ぜたタレと和えて作られます。

トウガラシが効いた辛いタレもあれば、ぜんぜん辛くないタレを使う店もあります。

また茹でた麺を熱いまま出す場合もあれば水でしめてから出す場合もあります。

biangbiang麺だけでもいろいろなバリエーションがあるわけですね。

臊子麺

臊は[sào]と読みます。臊子はサイコロ状に切った肉を意味します。

この麺は何よりもスープ(臊子湯)に特徴があります。

スープには黄色いたまご焼き、黒キクラゲ、赤いニンジン、緑の葉ニンニク、白い豆腐などカラフルな食材が入っています。

そして小さな角切りにした豚肉。これは予め醤油味で煮ておきます。

店によっては大量のラー油を使う場合もあります。そういう臊子麺は表面が真っ赤に見えます。

やはり臊子麺にもさまざまなバリエーションがあるのです。

麺食というと「麺プラスタレ」という栄養バランス的には偏りがあるものが多いのですが、臊子麺は具材たっぷりの麺なのでヘルシーです。

肉夹馍

馍は[mó]と読みます。上海あたりでは饅頭と呼ばれる食べ物を馍と言います。英語訳はブレッドです。確かに見た目はパンの一種。

肉夹馍は肉を挟んだ馍です。馍のあいだにトロットロに煮込んだ豚肉を崩したものが挟まれているのです。ハンバーガーと同じ構造ですね。

これも西安の名物です。中国では西安のB級グルメとして非常に有名です。

ちなみに肉は豚肉が一般的ですが羊肉のものもあります。

陝西省あたりに行くとイスラム文化の雰囲気が出てきます。羊肉の肉夹馍はイスラム教徒御用達の食べ物なのです。

肉は脂身が多いほうがおいしい派、脂身が少ないほうが好き派の他に、皮と肉の間のコラーゲン部分が入っていなければいけない派がいるそうです。

肉を煮込む汁の味は店ごとの「秘伝」なので奥が深い。中国語ができる人はネットで情報収集して店を選ぶという手もあります。

なお、中国語的には肉夹馍は「肉でパンを挟む」という意味になります。パンで肉を挟んでいるなら中国語では「馍夹肉」になるはずです。

どうして肉夹馍なのかは中国では食べ物ウンチクのひとつです。もともとは「肉夹于馍」だったのが「肉夹馍」になったというのが名前の由来です。

泡馍と煮馍

泡馍[pào mó]は食べ方に特徴があります。

羊のスープ(牛のスープの場合もあります)にちぎった馍を浸して食べるのです。

パンにスープがしみ込んで柔らかくおいしくなります。

中国の食べ物に詳しい人は「泡馍はパンをちぎってからスープで煮る食べ物じゃないの?」と思われるかもしれません。

確かにそういう食べ物を泡馍と呼ぶのが一般的なのですが、詳しく言うとそれは煮馍と呼ばれる麺料理なのです。

泡馍は朝食に食べることが多く煮馍は昼に食べることが多いという違いもあります。

煮馍は馍を親指の先くらいにちぎってからスープの中で少量の具と一緒に煮て作ります。

店の厨房でちぎることもありますが、運ばれて来た馍をお客さんが自分の好みの大きさにちぎってからもう一度厨房に運んで煮ることもあります。

お客さんが自分でちぎるというのはオモシロイ習慣なので中国ではよく知られています。

摆湯麺

摆湯面[bǎi tāng miàn]は日本の「つけ麺」に似た食べ物です。

別々の器に入った麺とタレが出てきます。

麺はお湯がたっぷり入った碗の中に入っているので「釜揚げうどん」にも似ています。

麺のサイズは「銅銭くらいの厚さで幅はニラの葉くらい」だと表現されます。このような麺がちょうどタレと絡んで美味なのだそうです。

タレ(というよりもスープに近い)にはトマトと酢の酸味があるのでさっぱりしています。

つけ麺とも釜揚げうどんとも違うのはふたり以上集まって食べるときです。

摆湯面の場合は中央に大量の麺が入った巨大な碗が置かれます。そして各自が中央の碗から自分の小さな碗に麺を移して食べるのです。

同じ器から複数の人が麺をたぐるのは中国でも珍しい食べ方です。

陝西省の麺文化は底なし

今回紹介した麺は有名なものの中でも特に有名なものばかりです。どれも中国では全国的に知られている麺です。でもこれはほんの一部。

陝西省の麺は50種類以上あると言われています。さすが粉モノ文化の中心地。

陝西省に行ったら麺料理のバリエーションを堪能すべし!

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