漢方の中の牡丹と芍薬

牡丹と芍薬

牡丹と芍薬は立派な花を咲かせる観賞用の植物です。

このふたつの植物には共通点があります。

どちらも漢方薬の原料になるのをご存知でしょうか?

牡丹も芍薬も薬として「使うことができる」という程度の活躍ぶりではありません。このふたつの植物がなければ漢方治療が成り立たないほどよく使われる漢方薬なのです。

今回は漢方の中の牡丹と芍薬をご紹介しましょう。

花の王・牡丹

中国では牡丹は花の王と言われています。大きくて立派な花が咲くので昔から観賞用に栽培されてきました。ここまでは日本と同じですね。

さらに中国では牡丹の根や皮が薬として使われてきました。漢方薬としての名前は牡丹皮(ぼたんぴ)です。

牡丹皮の功能は清熱活血です。
漢方(薬膳)理論によると熱が出血傾向を高めることがあるとされています。そのような場合のケアに適した薬なのです。

具体的には婦人科で生理不順のケアなどに多用されます。

ただし出血量が多い人には適さないとされているので使い方には注意が必要です。

また活血薬のような瀉の作用をもつ薬を単独で用いるのは乱暴すぎるので通常は補血薬などと一緒に使います。

牡丹と薬膳

牡丹皮は薬膳に使われることは少ない漢方薬です。でも牡丹は薬膳と無縁の植物というわけではありません。

明代の記録によると牡丹の花を焼いて食べたり甘味の材料として用いていたようです。またゴマ油との相性が良いということです。

さらに牡丹の花の香りを移した牡丹露酒も作られていました。これなどは日本でも簡単に作ることができそうです。

牡丹花の効能は調経活血です。やはり花のほうにも女性の生理のトラブルを改善する作用があるのです。

現在の中国では牡丹花を使ったジャムも作られています。

牡丹花ジャムは洛陽(らくよう)がご当地名産として売り出し中です。

白芍と赤芍

芍薬の花は牡丹の花とそっくりです。英語ではどちらもpeony[píːəni]と呼ばれて区別されていないようです。

芍薬にも牡丹にも多くの品種があるので花の特徴から区別するのは難しいと思います。

簡単に言えば芍薬は草で牡丹は木です。

芍薬は寒くなると地上部分が枯れてしまいますが、牡丹は木が残ります。ですから木質の部分があれば牡丹で草のような柔らかい茎に咲くのが芍薬なのです。

芍薬は名前に「薬」の字があるようにとてもとてもポピュラーな漢方薬です。

日本でもお馴染みの芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)などの処方名にも登場します。

漢方薬としての芍薬には白芍(びゃくしゃく)と赤芍(せきしゃく)の2種類があります。

これは花の色による区別ではなく加工法の違いによる区別です。

赤芍は芍薬の根を洗って皮付きのまま乾燥させたものです。

白芍は芍薬の根を煮て皮を剥いでから乾燥させたものです。

これだけの違いですが白芍と赤芍の功能は大きく異なります。

芍薬の功能はたくさんあるのですが、昔から中国では「白補赤瀉、白収赤散」とおぼえることになっています。

白芍は補の薬で赤芍は瀉の薬なのです。補と瀉は正反対ですからはっきりと区別しなければなりません。

『傷寒論』の中には芍薬を使う処方がおよそ30ほどあるのですが、文面には単に「芍薬」と書いてあるだけなので専門家のあいだでは白芍を使うべきか赤芍を使うべきか議論になることもあります。

『傷寒論』の時代にはまだ白芍と赤芍の区別がありませんでした。

当時の「芍薬」が現代の白芍に相当するものなのか赤芍に相当するものなのか、漢方に一家言ある人はみなさんブログなどで自説を披露しています。

芍薬と薬膳

牡丹と同じように芍薬の花も食材になります。

芍薬の花を使った食べ物として一番有名なのは西太后の美容食・芍薬ドーナツでしょう。中国語名は芍薬花餅です。

芍薬花餅は小麦粉、たまご、芍薬の花を混ぜてから油で揚げたものです。

いちおう「ドーナツ」と訳しましたが実際は薄い板状に作っていました。

この手のスイーツは形を自由に変えられますし、バリエーションも豊富です。

円形のドーナツ状にしてもよいですしクッキーにしてもよいでしょう。

花びらを陰干しすれば芍薬茶の材料にもなります。

小さじ1杯の花に熱湯を注ぎ、甘みをつけていただきます。

おだやかな養陰清熱作用があり、潤いが不足した体を優しくケアしてくれます。

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