贈答品としての高級漢方薬

 

高価な漢方薬

中国では高価な漢方薬が贈答品に使われます。

中国の大規模な薬局には贈り物用の薬コーナーがりますし、デパートにも贈答品としての高価な漢方薬コーナーがあります。

日本人とは無縁の習慣のようにも思われますが仕事や観光で中国との往来が盛んになっていますから思いがけず高価な漢方薬をプレゼントされることがあるかもしれません。

しかし薬は使い方を誤れば毒にもなるという厄介なシロモノ。

そこで贈答品としてポピュラーな高級漢方薬のあれこれをご紹介しましょう。

定風神薬・天麻(てんま)

天麻は腐生ランであるオニノヤガラの根です。

オニノヤガラ自体が貴重な植物なので以前は非常に高価でした。

現在でもかなり高価な薬ですが、すでに栽培技術が確立していますので高嶺の花というほどではありません。

天麻は漢方的には「風」を鎮める薬です。

薬膳や漢方を勉強すると「風」という言葉がでてきますが「風」にはいろいろな意味があるので初学者にはわかりづらい言葉です。

まして漢方や薬膳のことを知らない人には一体どういうときに使う薬なのか見当もつかないと思います。

漢方用語で「風」というのは、あるときは病気の原因であり、ある時は症状を表す言葉です。

天麻は症状としての「風」があるときに使われる薬です。ではどういう症状が「風」に含まれるのでしょうか?

症状としての「風」の特徴は「①上部と体表のトラブル、②変化が激しい、③動きを伴う」にまとめることができます。

例えば頭痛や遊走性の疼痛や痙攣などが「風」に含まれます。脳梗塞やリウマチなどの大きな病気の症状も「風」に含まれますから天麻は臨床上重要な漢方薬です。

漢方の世界では「風」症状の原因を改善する薬とブレンドして使います。

天麻はなぜか薬膳にも多用されてきました。

天麻は特に際立った味があるわけではないのですが天麻を使う薬膳レシピは非常に多いのです。

その大半はスープですが有名な料理を挙げるとすれば天麻猪脳粥でしょう。

これは天麻とブタの脳みそで作るお粥です。見た目に抵抗がなければ非常においしい一品。

頭部の「風」症状を改善する薬膳料理なので現在の中国ではメニエール病や頭痛のケアに応用されています。

天麻は量を過ごすと天麻中毒を引き起こ強い薬です。

天麻を使った薬膳を作るときは1日分の使用量を厳守してください。

鹿茸(ろくじょう)

鹿茸は鹿のツノです。

ただし私たちがイメージする鹿のツノとは違います。成熟し骨化したツノは薬になりません。

未成熟の鹿のツノには毛が生えています。この状態のツノが薬になるのです。

市販されているものは通常は薄くカットされています。

鹿茸の功能はは補腎壮陽です。民間療法的に言えば強壮剤です。

ただし誰が飲んでも効くというわけではありません。また濫用するのもよくありません。

漢方的に言えば陰虚火旺、肝陽上亢の状態には適していません。虚実どちらにせよ陰陽のバランスが崩れて陽が強すぎる状態になっているときには適していないということになります。

また高血圧、腎炎、肝炎の患者さんにも向かないとされています。

日本には陰虚火旺とか肝陽上亢という概念が一般的ではないので、自分との相性の判断が難しいと思います。

詳しくは漢方の専門家か薬膳の専門家に訊ねるとよいでしょう。

冬虫夏草

冬虫夏草は蝙蝠蛾の幼虫から生えてくるキノコの一種です。

チベットや青海省の海抜4000メートル地域で採取される貴重な漢方薬なので非常に高価です。

昆虫から生えるキノコには多くの種類がありますが薬用として使われるものは限られています。

功能は止血化痰、止咳化痰など文献により若干の違いがありますが、肺経の虚証のケアに用いられると理解すればよいでしょう。

簡単にいえば体が弱った人の咳や痰を改善してくれる薬です。

現在の中国では冬虫夏草の薬理作用について西洋医学的な研究も盛んです。

冬虫夏草は薬膳の素材としても使われてきました。

虫草鶏、虫草鴨、虫草牛尾湯など、肉類の煮込み料理やスープに加える用法が多いようです。

近年では冬虫夏草の菌を人工的に栽培する技術が確立して大量生産が可能になっています。

見た目は天然モノとは全く違うのですが価格が手ごろなので食材として気軽に使えるようになりつつあります。

石斛(せっこく)

先ほどご紹介した天麻はランでしたが石斛もランです。

石斛の場合はランのクキが漢方薬になるのです。こちらのほうは観賞用にもなる美しいランです。

園芸の好きな人には石斛というよりもデンドロビウムと言ったほうがわかりやすいでしょう。

デンドロビウムは膨大なラン科植物の中でも最大のグループです。漢方薬の石斛も植物学的に言えば実は一種類のランではなくデンドロビウムに属するいくつかのランの総称なのです。

中国で薬用になる石斛は39種あると言われていますが通常は「鉄皮石斛」を指します。現在は栽培されていますが、野生の石斛は非常に高価です。

石斛の功能は滋陰清熱です。病後の虚熱のケアなどに用います。

通常は煎じて飲みますがスープに入れることもあります。また薬酒としても用いられます。アルコール度数40度以上の蒸留酒に3か月漬ければ完成します。

更年期のホットフラッシュなどは漢方的には虚熱であることが多いので、気になる方は石斛を試してみる価値ありです。

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