薬膳理論解説:「陽」って何?

「陽」ってなに?

陽のいちばん基本的な働きはからだを温める作用です。

陽を強める食べ物を食べると体が温まるのを感じることがあります。でも特に何も感じないことのほうが多いかもしれません。

薬膳の考えによると「体が温まる」というのは体温計で計る体温や自分自身の体感とは必ずしも関係がありません。

陽が増えると舌の色や脈の強さなどが変化します。そのことによって体が温まったと判断します。何も感じなくてもインナーバランスは変化しています。

陽の性質

陽は体を温めるだけではありません。陽は生命活動全般を活発化させるエネルギーです。

例えば陽が強くなるとメンタル面では積極性が増します。肉体的には強壮になります。

漢方の世界では不妊治療の手段として陽を高める方法が使われることもあります。陽には新たな生命を生み出すために必要なパワーが秘められているからです。

陽はとても大切な生命エネルギーですが、だからと言って強ければいいとは限りません。陽には適切なレベルがあります。

そのレベルより強すぎても弱すぎても問題が発生します。

陽が強すぎるとどうなるのか

陽が強すぎると実熱証という状態になります。これは陽が体を温めすぎて余計な熱が体に溜まってしまった状態です。

実熱証になると赤いニキビができたり肌が乾燥したりします。こうした問題は病気とまでは言えませんが、薬膳理論からすればケアしなければいけないほどインナーバランスが乱れた状態です。

陽が強すぎるとメンタル面にも影響が出ます。なかなか寝付けない、キレやすい、イライラする、セカセカするなどの精神状態は陽が強すぎて情緒が過剰に刺激された結果です。

さらに陽には上半身に向かう性質があります。この傾向が強まると特に首から上に異常が現れます。
目が血走ったり口内炎ができたり口臭が強くなったりするだけではなく、ひどい場合にはめまいや頭痛などに発展することもあります。

陽が弱すぎるとどうなるのか

陽が弱すぎると陽虚証(虚寒証)という状態になります。

陽虚証になると体を温めるちからが不足して体が冷えます。いわゆる冷え性はほとんどの場合に陽虚証です。

陽が不足するとメンタル的にはネガティブ思考になりやすく、また朝起きるのがつらくなります。

薬膳の選び方

薬膳ケアの最も基本的な考え方は「陽が強すぎるときは冷ます、陽が少ないときには陽を補う」です。

もう少し詳しく説明しましょう。

実熱証の場合

陽が強すぎるときは体の熱を冷ますタイプの食事が適しています。そのような薬膳を清熱薬膳と言います。

強すぎる陽の影響で体の「熱」が増えてしまうので、それを冷ますというわけです。

強すぎる陽そのものを弱める手段は漢方治療の場面ではよく使われますが、薬膳の場合には熱を冷ますだけで十分です。

なぜかというと実熱証というのは陽が強すぎる状態ですが、その「陽」は本来の生命エネルギーレベルではなく、環境の変化や飲食物の影響で一時的に刺激されているだけだからです。

一時的に炎上した「熱」を冷ましていれば陽のレベルは自然に元に戻ります。生命エネルギーは自発的にバランスを回復する性質を持っているからです。

陽虚証の場合

陽が弱すぎるときは陽を強めるタイプの食事が適しています。そのような薬膳を補陽薬膳といいます。不足した陽を補うという意味です。

理屈の上では「陽が足りないから陽を補う」はわかりやすいのですが、実際は陽を補う作用がある食材は限られています。

また陽を補う作用がある食材はニラやマトンのようにクセがあるものが多く、そういう食材が苦手な人は補陽薬膳を続けることができません。

そこで陽虚証の場合には体を温めるタイプの食事を選ぶのが一般的です。

補陽するよりは時間がかかりますが、自然治癒力によって陽が自発的にレベルアップするのを待つ戦略です。

陽虚証の場合には体を冷やさないようにするのが大切なポイントです。

陽虚証はすでに体が冷えやすい状態ですから体を冷やすと体調が悪化しやすいわけです。

陽虚証の魔の手は迫っている

陽虚証は生命エネルギーが衰えている状態です。

一般的に体力を消耗したり体力が弱っている人は陽虚証の可能性があります。例えば産後、病後、高齢者が体が冷えやすいと感じる場合は陽が弱っていると考えてよいでしょう。

ということは誰でも陽虚証になることがあるということです。

最近「なんとなく調子が悪い」というときには陽虚証かもしれないのでインナーバランス判定をお勧めします。

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