乾燥肌の薬膳ケア
乾燥肌のように「病気ではないけど困っている」というトラブルには薬膳ケアが最適です。
薬膳ケアを始めるにはトラブル発生の原因を知ることが大切です。
では乾燥肌の原因は何でしょうか。薬膳理論の考え方を紹介ましょう。
薬膳理論によると乾燥肌は肌の潤い成分が不足している状態です。問題はどうして潤い成分が不足しているかという点です。これには多くの原因があります。
いきなり全てを紹介するとわかりづらいので先ず大きくふたつのタイプに分類しましょう。
ひとつは潤い成分である「陰」がモトモト足りていない場合です。
もうひとつは「何か」が「陰」を消耗している場合です。
「陰」がモトモト足りていない場合
「陰」がモトモト足りていない人のインナーバランスを分析するとだいたい4タイプに分類できます。
陰虚内熱 肝腎陰虚 気陰両虚 気血停滞の4タイプです。順番に説明しましょう。
陰虚内熱はサーマルコンディションが「熱」に傾いているケースの中で「虚熱」に相当するタイプです。
陰は潤い成分であると同時にからだを冷ます働きもあります。体を冷ます働きが弱まることで体が熱を持ってしまうわけです。この熱のせいで陰がさらに消耗するという悪循環が始まってしまいます。
ちなみにこのタイプはサーマコンディション分析で検出できます。
肝腎陰虚は「肝腎の陰」という局所的な陰が特に不足している状態です。肝陰の本体は血です(肝蔵血)。実は肌を潤す「陰」の実体は血と津液です。つまり血が不足すると乾燥肌になるわけです。
また「肝腎の陰」には陽の働き過ぎを抑える役割がありますから「肝腎の陰」が不足すると陽が強く働き過ぎて津液を消耗してしまいます。このことによってさらに乾燥肌は悪化します。
気陰両虚は気と陰が不足している状態です。
気が不足するだけでも肌に栄養を届ける働きが低下します。それに陰の不足が重なると乾燥肌が目立つようになります。
以上の3タイプはモトモト「陰」が足りていないという点で共通しています。

百合根は陰を補う食材(補陰食材)
なぜこのような状態になってしまうのでしょうか?
食べ物の偏りで「陰」が不足することもありますが、体力を消耗するようなイベント(出産、病気、ケガなど)やメンタル面での大きなストレスが「陰」を消耗することが多いとされています。
以上の3タイプのケアは漢方治療ではそれぞれ異なりますが、薬膳的にはどれも「補陰薬膳」でケアすることができます。
気血停滞は気と血のめぐりが悪いせいで肌に充分な栄養が届いていない状態です。
このケースではからだ全体の「陰」が不足しているとは限りませんが、肌に充分な陰がめぐっていないので「陰の不足」と同じ結果になります。

桑の実は補陰食材
気血停滞の人の体にはアザができやすいとか関節が痛むなど「めぐりの悪さ」を示すサインが現れます。舌の色は青紫色になり斑点が現れることもあります。
気血停滞のケアは気と血のめぐりを促進する「理気行血」という方法が適しています。例えばスパイシーなカレーにはこのような作用があります。
なお、気血停滞にはさらに深い原因があるのがふつうです。例えば気虚や血虚も原因になりますし湿なども原因になります。もちろん外邪も原因になります。
「理気行血」は「瀉」に属するケアなので「理気行血」だけでは陰を消耗してしまいます。そうなると乾燥肌は悪化してしまいます。
気血停滞のケアには適切に「補」を組み合わせて下さい。具体的な話はカレーについての記事をひと通り読んでいただければわかりやすいとおもいます。(カレーについての記事の難易度は一般読者向けです)

棗と一緒に用いると効果的
「何か」が「陰」を消耗している場合
体の中で「陰」が過剰に消費されると肌を潤す作用が低下してしまいます。
「陰」が過剰に消費される原因は「燥」と「熱」です。
燥による乾燥肌
「燥」は体の外から侵入してくる病気のモトです。病気のモトはまず肺に侵入します。
漢方理論的には肌は肺の一部と同じだと言ってよいほどの関係があります。ですから「燥」が体に入ってくると肺と肌が影響を受けます。
このような状態を燥邪犯肺と言います。具体的にはカゼを引いた状態です。カゼを引いてから肌が乾燥するようになった場合はこのタイプです。
「燥」によるカゼをこじらせて体のコンディションが悪化すると「燥」は体の奥深くまで侵入してしまいます。この状態を燥熱迫血と言います。
肌は単に乾燥するだけではなく炎症を示すこともあります。このレベルになるとハッキリした病気なので薬膳でケアする段階を超えています。
ですから薬膳的には燥邪犯肺のレベルをケアすることになります。
ケアの方法は薬膳的には「補陰」です。燥邪犯肺の人のサーマルコンディションは多くの場合に「熱」なので、薬膳のサーマルタイプは涼性にします。
熱による乾燥肌
「熱」そのものも「陰」を消耗するので乾燥肌の原因になります。
熱の中でも特に湿熱があると乾燥肌になりやすいとされています。
湿は体にとって有益な潤い成分が内臓の働きの低下や潤い成分の過剰摂取などによって「余計なモノ」に変化してできます。
そして湿は時間が経つと熱を出すようになります。それが湿熱です。
湿ができること自体が潤い成分の「めぐり」に何らかの異常があることを示しています。そのうえ「熱」があると肌を潤す働きが低下してしまうのです。
湿熱のケアは「清熱利湿」です。
薬膳的には先ず食べ物のサーマルタイプを涼性にします。そして「化湿(利湿)」作用がある食材を意識的に使います。
「化湿(利湿)」というのは湿をデトックスする作用です。ヨクイニンなどにこのような作用があります。

初心者は食べ物のサーマルタイプだけでも意識するとよいでしょう。
体には自己回復力があるので、現在のコンディションを悪化させないようにケアするだけでも乾燥肌改善の効果があります。